情報統合省の日高義彰は国立公園の管理人に扮し、
テロリスト組織ブルー・ポニーの殺害を企ててきた。
部下の裏切り、元婚約者との再会と永遠の別れ、
国家とテロリストの果てしない不条理な殺人ゲーム……
スクランブル交差点を、もはや老人とも言える痩身の大男が、スーツ姿で左手にビジネスバッグを提げ右足をわずかに引きずるようにしながら、漂うように歩いていた。
男を取り囲む人々の大群は、皆一様に前かがみにまるで力ない兵隊の行進の様だった。
愛、笑顔、言葉、夢など、この世界には数えきれないほどの「贈りもの」があります。そして、その一つひとつには、たったひとりだけ、『贈り師』と呼ばれる者が存在します。
「Xで『トレパク』がトレンド入りして、騒ぎが大きくなるにつれ、連中にとってトレパクが真実かどうかなんて、どうでもよくなっていったと思うんです。それよりも、どうすれば獲物を……さやかを地べたに這いずり回らせることができるか。どうすれば、より効果的にさやかのメンタルを破壊することができるか……奴らは飢えた犬が骨付き肉にむしゃぶりつくように、そのゲームに熱中していった」(本文より)