太一は、アルツハイマー型認知症との診断を受けた後、明瞭かつ詳細にわたる過去の夢を見るようになる。
いくども夢を見るうちに、夢の中での経験が、実は新たに作り替えられた過去なのではないかと疑いはじめる。
そしてどうやら、太一の「現在」も、ほんとうに変わっていっているようだ。
これは、正常な機能を失った脳の見せる混迷なのか…。
仙台北部の閑静な住宅街で放火殺人事件が起きた。被害者は五十代女性。捜査線上に浮かび上がった容疑者の津波被害に対する保険金の不正受給疑惑から始まった捜査は、あっせん利得処罰法違反、地元政治家への贈収賄事件へと発展して行くが―。
東京出張に向かう新幹線の中、才野木はひとりの大学生の由紀と隣の席になった。
父娘ほど年齢差がある二人だが、不思議なほどに会話の波長が合う。東京のホテルでの食事を皮切りに、二人の時間はどんどん重なっていった。