「Xで『トレパク』がトレンド入りして、騒ぎが大きくなるにつれ、連中にとってトレパクが真実かどうかなんて、どうでもよくなっていったと思うんです。それよりも、どうすれば獲物を……さやかを地べたに這いずり回らせることができるか。どうすれば、より効果的にさやかのメンタルを破壊することができるか……奴らは飢えた犬が骨付き肉にむしゃぶりつくように、そのゲームに熱中していった」(本文より)
人類は生命体が機能を亡くした場合、肉体と心思に分かれる。
肉体は機能不全となり荼毘に付され、骨となりいずれは土に返る。
主人公チコは、強迫性障害や潔癖症をともなう不安神経症がエスカレートし、会社を辞めてニートになった。恋人に励まされながら、社会復帰を目指す日々。そんな生活の中で、チコは自分自身を見つめ直し、人生における大切なことに気付いてゆく。
吉尾健太郎の幻想短編集。表題作に加え、「ワンダーランド」「エデンの園」「エンピツ君物語」「仮想酒場」の4篇を収録。