二〇〇五年、東京ー。
疎外の連鎖が広がる街で孤独な心が二つ、ひっそりと時を重ねた。
人生に完結はない。それでも人はいつまでも夢を追い続ける。未完の先にあるものを求めて‥‥。
大動脈瘤切迫の手術で3本の人口動脈を装填して命を繋いでいる中田。九死に一生を得た彼が見つけた人間の絆、忠恕の心、生きる歓び、希望。パンドラの箱に最後に残っていたものを抱えて未完の人生を歩いていく。
〈3×3=苦〉の謎とは?
ある会社社長夫人は、ひょんなことから貧しげな一青年詩人と出逢い、彼のなにがしかの援助をしたいと思うようになる。一件ごくありふれた恋愛小説のような出だしから、読み進むにつれ、人間心理の機微と暗部を抉(えぐ)る怖いストーリーに変貌してゆく……。緻密な構成で意外な展開を迎える衝撃作「詩人と福の神」。