昭和19年、サイパンに降り立った南雲忠一中将。
サイパンの海軍専用の料亭で働く芸者、お駒。
日米軍のあいだには圧倒的な兵力の差があった。資材不足で無防備な日本軍に対し、制空・制海権を掌握している完全な米軍。戦局は悪化の一途をたどりサイパン島は放棄され、「絶対国防圏」は崩壊した。
もちろん、生きているということはひとつの悲しみである。
手品師、落語家、老詩人、
水商売、自殺した子と父……
舞台は尽きることなくめまぐるしく変わり、
それぞれが「何か」と隣り合わせに過ごしている。
人は誰しも人生の初期に迷いや未熟さから重大な誤りを犯し、のちの人生に取り返しのつかない禍根を残すことがある。
成長した男女二人の主人公が、失われた過去をとり戻すために、時空を越えて真実を見極める旅に出る。
子育てを終え60代を迎えた千恵は、テレビの企画を通じて憧れの人気俳優が、別荘の管理人を募集していることを知り、応募する。
自分より若い候補者たちに引け目を感じながらも、前を向く力を取り戻していく。