フランスの化学者ルィ・パストゥール。
彼の蚕病研究の再評価を試みる。
¥--- (税込)
著者 Tosihiko Hukuhara
A5判・152頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-939061-52-3
2011年12月発行
19世紀半ば、フランスの養蚕業は蚕病の流行のために壊滅の危機に瀕した。
養蚕家は減税や健全蚕種の斡旋、蚕病研究推進などを政府に請願した。
蚕病研究についての対応を任された上院議員デューマは
かっての教え子の化学者ルィ・パストゥールに蚕病の研究を依頼した。
これが転機となってパストゥールは病気の研究に初めて従事することになった。
5年に亘る蚕病研究の経験は後の人畜伝染病の研究に生かされた。
パストゥールの蚕病研究は今まで仏伊の蚕病研究者の意見に基づいて評価されてきたが、これらの国では養蚕業の衰退のために蚕病研究は20世紀半ばに終焉を迎えた。
一方、西欧科学の導入から始まった日本の蚕病研究は20世紀に入ると西欧を抜くレベルに達した。
しかし、言葉の障壁のためにその成果は欧米では充分に理解されていない。
最近50年の蚕病研究の進歩は著しい。
また長い間非公開であったパストゥールの実験ノートがフランス国立図書館に寄贈された結果閲覧可能になった。
本書はこのような最新の情報に基づいて
パストゥールの蚕病研究の再評価を試みたものである。
外国の人々にも広く知ってもらうために、本書は英文で書かれている。
1957年 東京大学農学部卒
1967年 同大大学院生物系研究科卒、農学博士。
1997-1998年 東京農工大農学部教授、同大名誉教授。
1998-2004年 日本大生物資源科学部教授。
Society for Invertebrate Pathology Emeritus Member。
昆虫病理研究会会長、日本蚕糸学会理事、
応用動物昆虫学会編集委員、
Journal of Invertebrate Pathologyの Editorial Boardなどを務めた。
日本蚕糸学会賞受賞。
著書には「昆虫病理学増補版」(学会出版センター、1991年刊)、
「昆虫伝染病の科学史」(サイエンスハウス、1997 年刊)などがある。