英語教育の立場、日本語教育の立場から
異文化コミュニケーションにおける日本語の役割を探る
¥990 (税込)
上村妙子
四六判・146頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-86522-435-1
2025年3月発行
私たちの多くは、英語を使いこなすことができなければ、異文化コミュニケーションに挑戦することはできないと思っています。そのため、外国人観光客が道に迷っているのを見かけても、英語が苦手な場合、つい話しかけるのを躊躇してしまいます。そのような時、日本語を活用すれば最初の一歩を踏み出すことができます。日本語は異文化コミュニケーションを行う手段として大きな可能性を秘めているのです。
本書は2部構成となっています。第1部は英語教育の立場から、第2部は日本語教育の立場から、異文化コミュニケーションにおける日本語の果たす役割としての可能性を探っています。第1部では、日本国内外での英語教育に関する研究から得られた知見を踏まえて、母語(日本語)と目標言語(英語)は共にコミュニケーションを行う上で大切な資源(リソース)として機能すると述べています。その上で、日本語をどのように活用すれば、英語で伝えることができるのかを具体的に説明しています。
第2部では、「やさしい日本語」に焦点を当て、日本にいる外国人にとって、分かりやすい日本語とはどのようなものかを探っています。書きことばと話しことばの両者を扱い、外国人の方々がそれぞれの母語でなら理解でき、また伝えることができる内容を扱うことのできる手段としての日本語のあり方を説明しています。
さらに、日本語をやさしく変換し活用することは、外国人だけではなく、子ども、高齢者、障害者などを含むすべての人々の生活を支える「サポーター」となるユニバーサルデザインの一つであることも指摘しています。
本書が、異文化コミュニケーションに踏み出すきっかけとなってくれることを願っています。
上村妙子(かみむら・たえこ)
聖心女子大学文学部卒業後、会社勤務を経て、Indiana University of Pennsylvania大学院を修了する(Ph. D. in English)。明海大学外国語学部英語英米文学科専任講師を経て、現在専修大学文学部英語英米文学科教授として、ライティング、異文化コミュニケーション、応用言語学に関連する授業を担当している。著書には、『Teaching EFL Composition in Japan』(専修大学出版会)、『EFL Grammar for Japanese Students and Teachers』(専修大学出版会)、『昭和・平成・令和に見る日本の一般文化の変遷』(パレード)などがある。これまでにアメリカ、カナダに滞在した経験から、それぞれの社会の根底にある価値観やものの見方に興味を持つ。