三つの論文から得られる、常識を反転させる
現象学的な見方。終末期の生に関する知恵。
¥880 (税込)
矢野泉
A6判・134頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-86522-209-8
2020年2月発行
現象学の始祖、ドイツのユダヤ系哲学者フッサールが生みだした現象学の解説を背景に、前景にあたる「はじめに」、後景にあたる「おわりに」を配し、本文を三つの論文の章で校正しました。
第一章は、愛犬ソラの死にゆく臨終期において、彼女の魂が離脱した瞬間をとくに描写しています。魂の身体からの離脱を遅らせることが、愛犬の死の苦痛を増すことであると分かった。病死であっても、寿命は決まっており、愛着を手放すことの意味を示唆しました。
第二章は、ソラより半年年上の愛犬ハルが心臓僧坊弁膜症にかかり五年間の闘病、いのちの終末を迎えるまで世話をした経験の謎から示された知恵をまとめています。
第三章は、尊敬している元小学校教員のライフヒストリーを、現象学的な観察法で反省し、質的心理学や社会学の知見を借りながら分析しました。本書における分析の大事な手がかりである、質的心理学すなわち観察の会話データの探査により、人間の生涯発達に関して、常識を転換させることが可能になりました。
臨終期から教えられる常識を反転させる現象学的な見方があります。群れで生きる犬が大好きな方、大切な人間や愛犬とのお別れを経験した方と分かち合いたい極限の知恵が本書に収められています。
【目次】
はじめに~臨終期から教えられる現象学
Ⅰ.臨終期から教えられる感覚 ―魂の重さ―
Ⅱ.ゆだねるという能動
Ⅲ.無の次元を予期する臨終感覚運動 ―経験に埋め込まれた謎解き―
おわりに~経験に埋め込まれた謎解き
矢野泉(やの・いずみ)
東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科修了。教育学修士。東海大学助手を経て、1998年から、横浜国立大学に着任し、2020年2月現在教育学部教授。著書、学術論文等多数。