みんなが水道民営化に興味を持って、
より深い議論をするためのガイドブック。
¥1,870 (税込)
村上武士
四六判・188頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-34139-7
2024年8月発行
水道民営化(コンセッション契約)に関連する知識を幅広く整理しました。
1章:水道事業の施設、水道ビジネスの収支構造
2章:国内の水道事業の概況、直面する3つの課題
3章:水道事業を民間運営とする目的、コンセッションを含むPPP方式の比較
4章:水道コンセッションの主な契約条件
5章:国内の他の分野のコンセッションの過去事例(水道事業との比較)
6章:世界銀行の方針、海外の代表的な水道民営化事例、海外の潮流、得られた教訓
7章:国内水道民営化に関する提案
【本について】
本書を発行した理由は、市民の方々に水道民営化(コンセッション事業)に関する深い情報を共有したいと考えたためです。この考えは、「ボリビア水紛争」を調査した経験から生まれました。
ボリビアのコチャバンバ市は1997年に水道民営化が進められましたが、市民・NGOグループが反対し、政府と市民の間で紛争が発生しました。衝突で学生の死傷者が出たことで、反対派が優勢となり、政府は水道事業の再公営化を決定します。この結果、国際NGOは水紛争を「市民の勝利」として宣伝しました。
しかしながら、著者が12年後にボリビアを訪問し調査したところ、水紛争は「市民の勝利」ではなく「市民の敗北」と認識するに至りました。なぜなら、政府と市民との政策争いで揺れ動いた水道事業は放置され、劣悪な給水が続く状況を目の当たりにしたためです。
私は日本の水道民営化の議論が、ボリビア同様「市民の敗北」を招くことを懸念しています。賛成か反対かという表面的な議論に終始した場合、たとえ政治的に勝利しても、子供世代には劣化した水道施設が残される可能性があります。本書をきっかけに市民の方々が理解を深め、将来を見据えたより建設的な議論ができる様になれば大変嬉しく思います。
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国内でも水道民営化の第1号案件が宮城県で始まりました。賛成・反対だけでなく、より深い議論をするためのガイドブックです。
この本で伝えたいことは、市民が水道民営化に興味(懸念)を持ち、それについて考えたり、話し合ったりすることは大きな意義が有るということです。市民の意向がはっきりわかれば、それに従って契約条件や企業の選定条件を決めることができ、事業が成功する確率が高まります。運営時も、市民の注目度が高ければ、企業は手抜きをせず、良いサービス提供が続くと期待できます。
村上武士(むらかみ・たけし)
株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング、主任コンサルタント。
技術士(上下水道部門、総合技術監理部門)。
途上国の水道民営化をテーマとして、英マンチェスター大学開発学修士号、京都大学工学博士号を取得。
途上国支援を行う開発コンサルティング業務に24年間従事し、計17か国のインフラ事業の計画・評価に参加。
水道技術者として10年間働いた後、現職で官民連携(PPP)のコンサルタントとして14年間勤務。
アジア・中南米・アフリカなどの水道民営化事例に精通。日本で水道民営化(コンセッション事業)が開始されたことを機に、市民の方々に深い情報を共有したいと考え、本書を発行。
学術論文:「途上国水道事業におけるコンセッション方式の入札・契約に関する研究」