歌は特別なものではなく、いつもそこにある。
日常が細やかに詠まれた歌集。
¥1,100 (税込)
朝倉恵子
四六判・156頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-35608-7
2025年4月15日
朝倉さんの歌には彼女の気質がさりげなく出る。
息細る母に「山がきれいね」と言いたり
ほかにはなにも言えずごめんね
破調も会話体も彼女の個性をしんと読者に伝える。
歌は特別なものでなく、いつもそこにある。
――歌人・足立晶子氏推薦。
表題の「ポケットに」は、
生まれ故郷の姫路市白浜町を詠んだ連作の一首からとられたもの。
「今、元気に暮らしている私にできることは、暮らしの中の小さな発見を積み重ねて、時々ポケットから出すようにして向き合っていくことです」
と語る著者・朝倉恵子氏。
本作は、彼女の2000年頃から最近までの二十数年間の作品をまとめた第一歌集です。
乾麺がたしかここらにあったはず薄暗がりにりんごが香る
母の昼テーブル挟む距離ありてわれサクサクと食べるレンコン
食堂の窓から見える小さき冬縦列駐車の直線冷える
混み合っていますとテープの声がして何も言えないようにできてる
五月山は駅舎の屋根によく似合う力を抜かず力を溜めず
家族を見送った経験がある人、過去の思い出を懐かしむ人、日々の雑事に追われる人……。
ぜひ本作を手にとってみてください。
きっと、沁み入る一句が見つかるはずです。