「杉原ビザ」で救われたユダヤ難民のその後の物語と、杉原千畝氏以外にもいた、尽力した外交官たちの記録。
¥1,430 (税込)
北出明
四六判・184頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-28274-4
2020年12月発行
偶然出会った一冊のアルバムに収められていた7人の写真は、私たちになにを語りかけようとしているのだろうか?
写真の裏面に残されていた手書きのメッセージから、彼らは1940年頃、ナチスに追われて日本に逃れてきたユダヤ難民らしいことがわかった。
そして、そこからすぐ思い出されたのは、「命のビザ」と呼ばれる日本への通過ビザを発給して数千人のユダヤ人を救ったとされる日本の外交官、杉原千畝のことだった。
その真相を追うべく2010年9月、アメリカ取材旅行を実施した著者に予期しなかった展開が待っていた。
一方、いまや「命のビザ」と言えば杉原千畝の代名詞のようになっている。
事実、映画、テレビドラマ、ドキュメンタリー、学校の教科書、ミュージカル等々、 まさに杉原賛歌一色の様相を呈しており、第二次世界大戦下、ヨーロッパから脱出しようとする多くのユダヤ人を救ったのはあたかも彼ひとりのような印象を与えている。
しかし、あの時、彼らに救いの手を差し伸べたのは杉原千畝のみならず、他国の外交官さらには別の日本人外交官もいたことはあまり知られていない。
我々日本人が同胞である杉原千畝の勇気ある人道的行為に称賛の拍手を送るのは当然のことであるが、その際はこれらの人々の存在にも思いを馳せ、敬意を表することを忘れてはならない。
北出明(きたで・あきら)
1944年三重県伊賀市生まれ。1966年慶應義塾大学文学部仏文学科卒業と同時に国際観光振興機構(JNTO)に就職。海外はジュネーブ、ダラス、ソウルに駐在。2004年JNTO退職。2017年「平成29年度外務大臣表彰」受章。著書に『風雪の歌人』(2001年)、『争いのなき国と国なれ』(2005年)、『韓国の観光カリスマ』(2007年)、『釜山港物語』(2009年)、『命のビザ、遥かなる旅路』(2012年)、『Visas of Life and the Epic Journey』(2014年)等。
〈本書に寄せる著者のコメント〉
私は以前から、杉原ビザ以外にもユダヤ人を救った“命のビザ”が存在していたことを我々はもっと知るべきだと主張してきました。
天国の杉原千畝さん自身、自分一人がヒーローのように扱われていることに戸惑いを感じているのではないかと思えてなりません。