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隠岐海峡を越え 奥出雲路 慟哭の旅
得ること叶わなかった親子家族の絆を求めて

思い出とは、癒しであり、疼痛である。男女を軸に描かれる昭和という時代の一大絵巻。

隠岐海峡を越え 奥出雲路 慟哭の旅
得ること叶わなかった親子家族の絆を求めて

¥--- (税込)

著者:隠岐次郎

四六判・432頁(ソフトカバー)

ISBN 978-4-86522-022-3

2014年8月発行

販売を終了しました

物語は、著者の「過ぎ去りしとき、調査せし、戦中―戦後のむかし話、関連法令」。並びに、終焉を迎えしこれまでの人生において、「えにしを戴き、交りし、見聞せし方々のお姿・人生」を基にしている。

思い出とは、まことに不思議なものである、厄介なものである。甦るむかしは、癒しもしてくれるものなれど、ともすれば、止めどもなく、こころに疼痛(いたみ)を覚えることである。「記憶とは、諸刃(もろは)の剣(つるぎ)である」。
~暮れつ方 振り返り見る 狂詩曲(ラプソディー) 儚く消ゆる 夢 たぐり(手繰り)つつ~
生を享けし大阪市港区、松江市への郷愁。
大東亜戦争、父の戦死。敵爆撃機「B‐29」から雨のごとくに降り落ちる焼夷弾、逃げ惑う空襲の惨状。敗戦に伴い、父母のふる郷・隠岐之国へ引き揚げ。如何ように改善されるとも、不可避なる定めの隠岐海峡、往時の隠岐航路・船旅に思う。貧の極みであった農村生活―農作業。嵐の如き農地改革―解放。
大東亜戦争に思う、国家総動員法、徴兵・赤紙、召(集)延(期)者、船舶運営会。戦争未亡人、逆縁婚、高齢未婚女性・オールドミス。様々な呼ばれ方をするも、健気に生き抜きし、痛みを背負った多くの女たちの戦後。学制改革、ご指導を戴きし、様々な経歴、性癖を持った、召延者であった者もいたであろう、教員という名の職業人との出会い。新制海士中学校「おさな第四期生のつどい」にて見せつけられる、友々の過ごせし人生における、方便(たづき)を得んが為の処世術を基に培われしパーソナリティー。戦後の高度経済成長期における、会社勤務・技術者生活。
遠くふる郷を離れ幾星霜、望郷の念。人の世、ふる郷、承継せし祭祀・墳墓の地、青山への思いは、生涯、消え去ることはない。
【隠岐次郎】

大東亜戦争。父の戦死、母は「逆縁婚」により奪いとられ、残された弟も、気配りの足らなさ故に、病で喪ってしまった。引き裂かれた樹林、たった独りぼっちでも家族と言えたのであろうか。
絆を求め、懐胎を願った愛する新司。臍帯が切られ身二つとなったが、いとし児を、ただ一度も自分の腕(かいな)に、この胸に抱くことも叶わず、この乳首を口に含ませることも許されず、生木をひき裂くがごとくにつれ去られてしまった。
五十五年を経ての出雲路。偶然にも得られた我が子との出会い。握手ができた、初めて、この手で我が子の肌に触れることができたのだ、これからの人生において、二度と得ること叶わぬ、親と子の肌の触れ合い。しかし、私にできることは、為さねばならぬことは、静かに、この出雲路から消え去ることのみであった。
【寺川 多樹】

著者紹介

隠岐次郎(おき・じろう)
大阪市港区にて生まれる。市立港区「錦国民学校」へ入学。大東亜戦争末期、空襲を避け、松江市へ戦時疎開、市立「白潟国民学校」へ転校。敗戦、島根県(隠岐之国)海士郡海士村へ引き揚げ。「要ヶ丘(地名)」に在する、新制村立「海士中学校」にて修学(第四期生)。現在、岡山県玉野市に在住。