老いても男は夢の続きを追い続け、女は失った過去を取り戻そうとする。誰のせいでもないのさ、笑い飛ばすしかないぜ、それが人生だからさ。
¥1,100 (税込)
目鯨翁
四六判・162頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-36439-6
2025年9月発行
生きてさえいれば、まだ心が揺さぶられるような出来事にも遭遇するし、新たな出会いもあるよ。
ただ若い時と違うのは、それらの出来事がいちいち琴線にふれるんだよ、夢破れた男の自慢話や痩せ我慢の表情が妙に愛おしく、肉おいた厚化粧の女の照れるような身の上話にわけもなく涙が出るのさ。寄る年波には抗えないが、おいら、何時からか「悪魔との取引に応じた奴」を見分けることが出来るようになったんだよ、政治家の先生であろうと、高級官僚であろうと、大企業の社長であろうと、大学教授であろうと、絶世の美人であろうと、それを隠すために、怯え、自分を見失っている奴はその匂いでわかるのさ、『えっ、悪魔との取引の意味?』てか、一言で話せるようなものじゃないぜ、逆さまだけど、これから紹介するいくつかの物語を、もうすぐ幕を閉じるそんなおいらの人生のエピローグを読んでくれ。
目鯨翁(めくじらおう)
小さな会社の代表取締役。
昭和24年生。75歳。23歳の時、仕事中の事故で右足大腿部を切断した。義足で半世紀以上を生きてきた。今も尚、幻覚痛(幻肢痛)のため鎮痛剤とは縁が切れない。しかし障害者という特設リングにはどうしても馴染まなかった。結婚歴2回、子供3人。45歳の時、25年務めた会社を退職、世の不条理に打ちひしがれ、さりとて理不尽には決して屈せず、乗り越えた試練を鎧に纏い、抗えない運命は笑い飛ばし、悪魔との取引には決して応じず、さりとて神のご加護も得られず、何度も脱輪し、多くの人を傷つけ、自らもまた深手を負い、蛇腹の人生邁進中。後期高齢者となった今も生傷は絶えない、悩みの種は尽きない。
『それでも人生は捨てたもんじゃあないぜ』と独り言ちながら生きているちょっと面倒くさい爺さんです。さぁてっと、あと何年目くじら立てて生きられるやら。