社会問題や個人が抱える生きづらさにユニークなスタイルで切り込む。
文学性とエンターテインメント性を併せ持つ作品集。
¥1,540 (税込)
蘭野みゆう
四六判・288頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-34110-6
2024年7月発行
「レクイエス・エテルナ 永遠のやすらぎ」
ある日、主人公の「私」と妹のタミーはかねてから安楽死を希望していた両親から、さまざまな手続きを済ませて、あとは医師による処方箋を待つばかりとなったことを知らされる。
姉妹は前々からその心境を聞かされていたので、「私」はある程度の理解をもっていたが、妹は「親に安楽死なんかされる側の気持ちにもなってごらんなさい」と泣いて怒り、断固認めようとしない。両親もそれぞれに葛藤していたが、父は膵臓癌がわかってから、いよいよ強く安楽死を望むようになった。生前葬のようなパーティーの場で、父の親友である喫茶店マスターの子門さんと母の友人の編集者田村さん、タミーの夫も加わって、安楽死に対するそれぞれの考えや思いが忌憚なく披露される。「私」は安楽死法制化によって、個人の自由意思に基づき本人が十分に納得した上で自らの人生に自ら幕を引く権利を持てるようになったことは肯定的に考えている。しかし、当初は厳格だった安楽死の条件が次第に緩くなっていき、さまざまな思惑により安楽死が促進される方向に向かうのではないかという不安を抱く。とにもかくにも、雪の舞う日曜日、野上家は「その日」を迎えた。終活世代の方々を含む、すべての世代に読んでほしい一編。
表題作に加え、中掌編小説4編を収録。
蘭野みゆう(らんのみゆう)
1955年、群馬県生まれ。2011年から秋田市在住。
埼玉大学大学院修士課程修了。
重度の不眠症による失職をきっかけに四十代半ばからブログや小説を書き始める。
著書
・「不眠の森をさまよって 体験的不眠症克服記」(筆名 村野ゆう 健友館 絶版)
・「オムニス 太古の海の賢者たち」(文芸社)
・「耳の恍惚 あるいは、感覚のメタモルフォ-ゼ」(日本文学館)
・「トンガの瞳 だんご虫と泣き虫の地球」(萌芽舎)
ブログ「びんぼっくりのアンテナ」