重力波望遠鏡施設JINJAで、弁理士羽生絹が観測した重力波信号のノイズは、施設上の山に身元不明の遺体が埋められた事実を示していた。新感覚本格ミステリー第二弾。
¥1,320 (税込)
川嶋秋月
四六判・328頁(ソフトカバー)
ISBN 978-4-434-31988-4
2023年5月発行
洋画家の歌楽は、旅行先の高山で偶然入ったラーメン店で、旧友川東とその妻文絵に遭遇する。
35年前、歌楽は雪のように白い肌をした芸者雪野に出会い、出世作『雪に生きる女』を描いた。
その雪野こそ、あの頃と変わらない美貌を保つ文絵だった。
文絵の絵を描いて欲しいと頼まれた歌楽は、夜中に包丁を持った川東に襲われる。川東は「なんてことをしてくれたんだ」と叫んでいた。なんとか逃げた歌楽は、絵の文絵の顔が鬼の顔に変わっているのに気づき凍り付く。そこへ再び川東が襲って来て、揉み合いの末、歌楽は川東を刺殺する。
岐阜県警の曽根刑事は、上司の原丸警部と共に捜査に当たる。
有名大学物理科出身の原丸は、宇宙方程式を発展させた雪女の時空方程式の完成を夢見ている。
取り調べで、歌楽は、川東が激高した原因は描いた文絵の顔が鬼に変わっていたせいで、文絵は雪女だと主張し、原丸は歌楽に共感する。
一方、重力波望遠鏡施設JINJAで、重力波信号のノイズを減らすノイズハンターとして従事していた弁理士羽生絹は、原因不明のノイズを検出する。
川東亭での殺人事件後、JINJA上の池ノ山に、行方不明になっている文絵の遺体を埋めたときの衝撃がノイズの原因ではないかと推理した絹は、原丸を利用して捜査に首を突っ込んでいく。
川嶋秋月(かわしま・しゅうげつ)
1944年大阪府に生まれ、大阪大学工学部精密工学科卒業。電気系会社で生産技術や開発を担当した後、国内特許事務所に入所して特許業務に携わる。その後独立し、特許事務所を自営しながら、弁理士会の役員、弁理士試験委員を歴任し、充実した弁理士生活を送った。
そして、人生の集大成として、退路を断つべく特許事務所を廃業し、少年時代の夢だったミステリー作家に挑戦。この作品は、「服を纏った白骨」に続く、弁理士探偵シリーズの第2弾です。